ことわざ小説

800文字しばりの短編をいくつか。それぞれおなじみの『ことわざ』を題材に書いたものです。最後に、ことわざを載せました。純文ぽいものあり、コメディあり、ペーソスあり。

◇ 其の1 ◇

「ぐぇっふぇっふぇ」

 悪の帝王・ギャビラは涎を垂らさんばかり、邪悪さに満ちた笑いを顔面に貼りつかせ美女ミディに迫る。

「まさかあんな所で宿敵にお会いできるとはな……お前をズタズタにしたら次はアイツだ、これで長年の恨みも晴らせる……さて、まずどこから潰してやろうか……目玉か? そのはち切れそうなオッ(自主規制)か、それともお前の崇高なるプライドからか?」

「助けてえ! 誰か!!」

 そこに

「待てっ!!」

 凛々しい声が響く。

 颯爽と現れたのは長身の黒装束、黒マントがばっさと翻る。かなりいい男っぽい。

「その娘を離せ、ドンブラ!!」

「出たな!」

 帝王どこか切なげに叫ぶ。

「いつもジャマしやがって! しかもこっちの名前も覚えねえし!」

「遅いわ!」

 ミディは嬉しさのあまり身悶えしながらも激怒してる。

「元はと言えばアンタが待ち合わせに遅れたからいけないのよっ! ハチ公の前で17時間も待ってたせいで、こんなヘンシツシャに捕まったし! なんで来なかったのっ!」

「あ?」

 突如現れた男は金髪をぽりぽりかじっている。

「なんか、腹減ったわー」

「「相変わらず聞いてねえ!!」」

 なぜかギャビラとミディの叫び声が揃う。

「え?」

 黒装束はきょろきょろ。「何かこの部屋、熱くね?」

「燃えてるからよ! 俺の怨念がメラメラと!」

 ギャビラは地団太踏んでいる。そこに金髪、

「あ、そうだ何でミディ、何? 縛られてる?」

「それさっきから言ってる!」

 ミディ絶叫。

「だ・ず・げ・ろ!!!」

 そこに突如

「ぐわはっっ」

 ギャビラ、血を吐いて崩れ落ちた。

 その後ろに銃構えて立っていたのは気味悪い笑みを浮かべる青白い顔の男

「ひひひっ、遂に我、地獄より蘇り。血ぬられた我が名は」

 そこを金髪、どおっと剣で衝く。あっさりやられる気味悪くん。

「せ、せめて名前を言わせてくれ、我が名は」

ようやく、正義の味方が答えた。

「あ、ごめん俺の名前ね」

 

【バジー・東風】バジー・シリーズのヒーロー()

 

【馬耳東風|人の意見や批評などに対して、それを気に留めずに聞き流すことのたとえ。|ウィクショナリー】